「投資家と企業の対話ガイドライン」の公表

火曜日 , 12, 6月 2018 「投資家と企業の対話ガイドライン」の公表 はコメントを受け付けていません

金融庁が2018年6月1日付で「投資家と企業の対話ガイドライン」を公表しました。

「投資家と企業の対話ガイドライン」の確定について

https://www.fsa.go.jp/news/30/singi/20180601.html

コーポレート・ガバナンス・コード(CGC)およびスチュワードシップ・コードの附属文書として、機関投資家と企業の対話において重点的に議論することが期待される事項を取りまとめたものです。

本ガイドラインは、コーポレートガバナンスを巡る現在の課題を踏まえ、スチュワードシ
ップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードが求める持続的な成長と中長期的な企業
価値の向上に向けた機関投資家と企業の対話において、重点的に議論することが期待される
事項を取りまとめたものである。機関投資家と企業との間で、これらの事項について建設的
な対話が行われることを通じ、企業が、自社の経営理念に基づき、持続的な成長と中長期的
な企業価値の向上を実現し、ひいては経済全体の成長と国民の安定的な資産形成に寄与する
ことが期待される。

本ガイドラインは、両コードの附属文書として位置付けられるものである。このため、本
ガイドラインは、その内容自体について、「コンプライ・オア・エクスプレイン」を求める
ものではないが、両コードの実効的な「コンプライ・オア・エクスプレイン」を促すことを
意図している。企業がコーポレートガバナンス・コードの各原則を実施する場合(各原則が
求める開示を行う場合を含む)や、実施しない理由の説明を行う場合には、本ガイドライン
の趣旨を踏まえることが期待される。 (前文より)

とあるので、本ガイドラインを通じてCoEの実効性を高めようとしているのでしょう。

本ガイドラインの内容は以下5項目になります。

  1. 経営環境の変化に対応した経営判断
  2. 投資戦略・財務管理の方針
  3. CEOの選解任・取締役会の機能発揮等
  4. 制作保有株式
  5. アセットオーナー

気になるところを抜粋してみます。

【取締役会の機能発揮】
3-6. 取締役会が、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に向けて、適切な知識・
経験・能力を全体として備え、ジェンダーや国際性の面を含む多様性を十分に確保
した形で構成されているか。その際、取締役として女性が選任されているか。

【独立社外取締役の選任・機能発揮】
3-8. 独立社外取締役として、適切な資質を有する者が、十分な人数選任されているか。
また、独立社外取締役は、資本効率などの財務に関する知識や関係法令等の理解な
ど、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に実効的に寄与していくために必要
な知見を備えているか。

【監査役の選任・機能発揮】
3-10. 監査役に、適切な経験・能力及び必要な財務・会計・法務に関する知識を有する
人材が選任されているか。
3-11. 監査役は、業務監査を適切に行うとともに、適正な会計監査の確保に向けた実効
的な対応を行っているか。監査役に対する十分な支援体制が整えられ、監査役と内
部監査部門との適切な連携が確保されているか。

「取締役会のダイバーシティ向上」や「企業価値の向上に向けた独立社外取締役の機能発揮」への期待はなかなか「いまどき」な記述ですね。監査役の選任・機能発揮については、社外監査役を拝命している我が身に直接関わる事項として、投資家との会話が起きる局面において常に意識しておきたい点だと思います。

 

当事務所へのお問い合わせはこちら

https://ssl.form-mailer.jp/fms/e5d2273b248067

Facebookページはこちら

https://www.facebook.com/harakancpa/

「スマートフォンゲーム等における収益認識基準に関するガイドライン」概略

火曜日 , 5, 6月 2018 「スマートフォンゲーム等における収益認識基準に関するガイドライン」概略 はコメントを受け付けていません

収益認識基準の公表を受けて、業種別のガイドラインが整備される動きがあります。ここでは一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)が2018年5月28日に公表した「ガイドラインの作成に向けた検討の開始」を紹介します。(太字は投稿者、以下同じ)

スマートフォンゲーム等における収益認識基準に関するガイドラインの作成に向けて(PDF)

https://www.mcf.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2018/05/mcf_release_20180529.pdf

同文書によれば、

今般、2018 年 3 月 30 日に、企業会計基準委員会(以下「ASBJ」)より公表された企業会計基準第 29 号「収益認識に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第 30 号「収益認識に関する会計基準の適用指針」(以下「収益認識基準」)に沿って、スマートフォンゲーム等における収益認識に関する業界ガイドラインの作成に向けた検討を開始しましたので、ご報告させていただきます。

スマートフォンゲームに特有な膨大なゲーム内アイテム等に関連する収益認識に関して、主要なパターンに応じたガイドラインを作成することで、会員企業の過度な負担となることなく、より適正な会計処理ができることを目指しております。(略)

当団体会員企業は、スマートフォン向けサービスを事業として提供しておりますが、特にスマートフォンゲームに関しては、収益認識の基礎となり得るゲーム内アイテム等が膨大に存在しており、個別に算定することは大変困難であるという問題があります。

とのことで、これまでに2回の意見提出と1回の意見交換を実施しています。

本文書で引用されている2回目の意見提出では、ビジネスモデルからスマホアプリ固有の課題について非常にわかりやすくまとめられているので是非一読をおすすめします。

収益認識に関する会計基準(案)への意見書 ※2回目

https://www.asb.or.jp/jp/wp-content/uploads/20170720_CL015.pdf

結論としては「ゲームユーザーがアイテム等を購⼊した時点」を「一時点」と解して、そのタイミングで履行義務が果たされたものと考えると主張していますね。また「一定期間にわたり」履行義務が果たされると解釈した場合でも、以下の課題が残ります。

  1. ⾒積もりの合理性の判断
  2. 新規ゲームへの対応
  3. ゲーム性の違い
  4. ガチャから⽣まれる収益の繰延対象
  5. ゲーム終了時期の選択による業績への恣意性介在の余地
  6. 会社側の判断による業績影響の幅の⼤きさ
  7. 財務諸表利⽤者の利便性

これらのやりとりを受け、ASBJの公開草案へのコメントへの対応として以下の記述がありました。

https://www.asb.or.jp/jp/wp-content/uploads/summary_20170720ed.pdf

(この資料の 24 ページ)

スマートフォンゲームにおけるゲーム内課金に係る収益認識については、収益認識会計基準第 38 項の要件に照らして、一時点で収益を認識すべきか、一定の期間にわたり収益を認識すべきかを判断する。仮に一定の期間にわたり収益を認識すべきと判断した場合には、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、当該進捗度に基づき収益を一定の期間にわたって計上することとなる。

なお、上記の判断及び進捗度の適切な見積方法は、企業が提供するゲームの性質や、ゲームの中で使用されるアイテムの性質等を加味して決定されるべきものであり、企業やゲームによって、収益の認識時期は異なる可能性がある。そのため、単一の収益認識方法を会計基準の中で定めることは適切ではなく、各社が、自社が提供するゲームの実態を反映した適切な方法に基づき収益を認識すべきであると考えられる。

「一時点」の解釈には違和感がないので、この考え方を前提にガイドラインが公表されるのを待ちたいと思います。

 

特にIT企業向けに「収益認識基準はここだけ読んでおこう」というポイントをまとめました。以下リンクより無料で入手できますので、お気軽にお申込みください。

(クリックすると別サイトに移動します)

https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdRwTakfmqf54-C6IJNHjC4oYmb5Hm_S3AA5xDmyQLYfcd1CQ/viewform?usp=sf_link

 

当事務所へのお問い合わせはこちら

https://ssl.form-mailer.jp/fms/e5d2273b248067

Facebookページはこちら

https://www.facebook.com/harakancpa/

e-Taxが改善されても電子申告は普及しないのか

月曜日 , 28, 5月 2018 e-Taxが改善されても電子申告は普及しないのか はコメントを受け付けていません

e-Taxによる申告手続が、来年からより便利になるようです。

 

平成 31 年1月から e-Tax の利用手続が より便利になります – 国税庁

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/kojin_e-tax_riyou2.pdf

【平成31年1月開始】e-Tax利用の簡便化に向けて準備を進めています

http://www.e-tax.nta.go.jp/topics/topics_290510_kanbenka.htm

具体的には、以下の方式のいずれかによる申告が可能になります。

  • マイナンバーカード方式
    • 従前 事前に税務署長に届出を提出。e-Tax用のID・パスワードを取得。申告時にID・パスワードを入力(ICカードリーダ/ライタが必要)
    • 今後 「事前に税務署長への届出」「e-Tax用のID・パスワードの取得」「申告時のID・パスワードの入力」を省略可能
  • ID・パスワード方式(マイナンバーカード及びICカードリーダ/ライタのない場合) ※新設
    • 厳格な本人確認(税務署における職員との対面など)のうえ、税務署でID・パスワードをその場で発行。申告時にID・パスワードを入力(ICカードリーダ/ライタ不要)

もっともID・パスワード方式はあくまで暫定対応のようで、原則はマイナンバーカード方式になります。

電子申告普及に向けて当局もがんばったと思いますが、多少なり注文をつけるならば以下のように考えます。

  • ICカードリーダ/ライタがネックになる点は変わらないので、マイナンバーカードと一緒にICカードリーダ/ライタを無償配付するぐらいにならないか
  • 税務署に行かないとID・パスワード発行されないのはハードル高いので、事前申込や発行も可にして税務署では本人確認のみにならないか

なにより、これだけマイナンバーカードが普及していない現状では上記の改善は限定的な効果しか見られないと思われます。これは税務当局の責任ではないかもしれませんが、マイナンバー通知カード「だけ」(本人確認手続が必要になりますが)で手続が進むように制度設計してしまい、そのように運用されているのがすべての失敗の原因と言えるでしょう。マイナンバーカードなしには手続が進まないぐらいに推進してもよかったように今にすると悔やまれます。ともあれ、電子申告が簡便な手続で完了する世の中になるのはまだまだ先のようです。

 

当事務所へのお問い合わせはこちら

https://ssl.form-mailer.jp/fms/e5d2273b248067

Facebookページはこちら

https://www.facebook.com/harakancpa/

株主総会資料の電子提供、道半ば

火曜日 , 22, 5月 2018 株主総会資料の電子提供、道半ば はコメントを受け付けていません

経営財務No.3359の記事より。

法務省・法制審義会「「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する中間試案」(平成30年2月14日)の取りまとめ

http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900348.html

この試案のなかで、株主総会資料を原則として書面で提供するルールが変更され、電子的に提供することが可能になっていくようです。

従前 原則として書面で提供、株主の個別承諾が必要

今後 ウェブサイトに掲載し、株主の個別承諾がなくても株主総会を適法に提供したものとする

上場企業には義務づけられるそうなので、決定すれば一気に普及することになりそうです。他方、ネットに接続できない環境にある株主に等しく提供するためには書面の提供は残ると思われますが、紙を前提とした制度が徐々にとはいえ変わっていく状況は歓迎したいところです。

また、招集通知の発送期限として

  • 【A案】 株主総会の日の4週間前まで
  • 【B案】 株主総会の日の3週間前まで
  • 【C案】 株主総会の日の2週間前まで

の3案が検討されており、今のところ現行に近いC案が有力とのことです。せっかく電子化されるのだから後ろ倒しにする案はないかとも思いますが、準備の期間を考えると2週間程度が現実的なのかもしれません。

 

当事務所へのお問い合わせはこちら

https://ssl.form-mailer.jp/fms/e5d2273b248067

Facebookページはこちら

https://www.facebook.com/harakancpa/

開示スケジュールは営業日ベースにできないか?

月曜日 , 14, 5月 2018 開示スケジュールは営業日ベースにできないか? はコメントを受け付けていません

決算発表ピークの季節が到来しています。

取引所の規則としていわゆる「45日ルール」が定められていることで、3月決算の会社はゴールデンウィークは存在しないものとして休日返上で過ごすのが通例になってしまっています。監査する立場の監査法人もまた同様です。(関係者の皆様大変お疲れ様です)

決算短信・四半期決算短信等作成要領

https://www.jpx.co.jp/equities/listed-co/format/summary/tvdivq0000004wuh-att/tvdivq000000up10.pdf

事業年度又は連結会計年度に係る決算については、遅くとも決算期末後45日(45日目が休日である場合は、翌営業日)以内に内容のとりまとめを行い、その開示を行うことが適当であり、決算期末後30日以内(期末が月末である場合は、翌月内)の開示が、より望ましいものと考えられます。

ルールはこのとおりなのですが、素朴な疑問としてこの45日ルール、営業日ベースで考えるわけにはいかないのかと思います。たとえば今年(2018年)の場合計算してみると

  • 「30営業日」→5月16日(期末日から46日)
  • 「40営業日」→5月30日(期末日から60日)
  • 「45営業日」→6月6日(期末日から66日)

となります。さすがに開示まで年度末から2ヶ月以上空くのは迅速な開示とはいいがたく、有価証券報告書の開示タイミングとも近くて実務上も都合が悪そうなことはわかります。とはいえ、これだけ労働時間の削減が社会問題化しているなか、業務効率化だけで決算業務の集中時期を乗り切るのが困難なことは明らかです。たとえば「30営業日」を目安として、その範囲で作業が収まるように開示の量や質を削減するといった工夫が求められるのではないかと思います。開示の一元化や単体開示の省略といった合わせ技も有効です。(こちらはこちらで検討が進んでいますが)

45日ルールは長年にわたり取引所の決め事でして運用されているので実際に変えるのは難しいとは思いますが、つい所与の条件として受け入れてしまいがちですが、そもそもの話に立ち返って考えてみるのも大事かと思いあえて制約を外して考えてみました。

 

当事務所へのお問い合わせはこちら

https://ssl.form-mailer.jp/fms/e5d2273b248067

Facebookページはこちら

https://www.facebook.com/harakancpa/

「会社設立の高速化」よりも「事業開始の高速化」を

月曜日 , 7, 5月 2018 「会社設立の高速化」よりも「事業開始の高速化」を はコメントを受け付けていません

会社設立のスピードが一気に速まりそうです。

会社設立「10日→1日」で可能に 簡素化で起業促す(要ログイン)

https://www.asahi.com/articles/ASL4Y52PXL4YULZU004.html

私も10年以上前に自分の会社を設立したときは定款認証のために公証人役場に出向きました。公証人が席を外しているときも、机の上に(捺印済みの)認証済み書類(A4一枚)が山積みだったことを鮮明に覚えております。書類を機械的に発行するだけの業務でなぜ公証人が常にいなければならないのか今もって理解できませんが、当時も今もそういった制度なのでしょう。

こういった行政手続が簡素化されてスピードアップが図られること自体はよいことでありますが、事業開始のフロー全体を見渡すとまだまだ一部分しか改善されていないなと思います。というのも、実際に会社が機能するためには

  • 税務署への届出(国税)
  • 自治体への届出(地方税)
  • 年金事務所や健保組合への届出(従業員を雇う場合)
  • 労働基準監督署への届出
  • 銀行口座の開設

と、設立以後も事務作業が山積みであり、これらを順調にクリアしてもだいたい一ヶ月ぐらいは煩雑な事務作業に追われるというのが現状かと思います。諸手続をワンストップで提供するサービスも出ていますが、どうしても行政ルールに引きずられるのでオンラインで完結というわけにはいきません。そういう意味では「設立手続の高速化」のみならず「事業開始の高速化」が求められているのではないでしょうか。

現在は法人番号の付与という形で行政側での一元管理が可能になったことですし、マイナンバーで名寄せもできます。これらの煩雑な手続のためにいちいち走り回らなくてすむ仕組みを一日も早く確立してもらいたいと思います。

 

当事務所へのお問い合わせはこちら。事業開始のご相談もお気軽に

https://ssl.form-mailer.jp/fms/e5d2273b248067

Facebookページはこちら

https://www.facebook.com/harakancpa/

[収益認識]「一定の期間にわたる」履行義務の判定

火曜日 , 24, 4月 2018 [収益認識]「一定の期間にわたる」履行義務の判定 はコメントを受け付けていません

新しい収益認識基準について。エントリの続きです。

包括的な収益認識の基準が導入されることにともない、ソフトウェアの会計処理や工事進行基準への影響があります。具体的には以下の基準等が廃止される予定です。

  • 企業会計基準第15号「工事契約に関する会計基準」
  • 企業会計基準適用指針第18号「工事契約に関する会計基準の適用指針」
  • 実務対応報告第17号「ソフトウェア取引の収益の会計処理に関する実務上の取扱い」

詳細については基準本文をご参照ください。

https://www.asb.or.jp/jp/accounting_standards/accounting_standards/y2018/2018-0330.html

基準38項の記述を引用します。(太字は筆者)

以下のいずれかを満たす場合、「一定の期間にわたり」履行義務を充足し収益を認識する。
1. 便益を享受する企業が顧客との契約における義務を履行するにつれて、顧客が便益を享受すること
2. 企業が顧客との契約における義務を履行することにより、資産が生じる又は資産の価値が増加し、当該資産が生じる又は当該資産の価値が増加するにつれて、顧客が当該資産を支配すること
3. 次の要件のいずれも満たすこと
(ア) 企業が顧客との契約における義務を履行することにより、別の用途に転用することができない資産が生じること
(イ) 企業が顧客との契約における義務の履行を完了した部分について、対価を収受する強制力のある権利を有していること

具体的には、適用指針の[設例4][設例7][設例8]に解説があります。ここでは[設例7](コンサルティング・サービスを提供する契約)の記述を援用します。

  • A社(コンサルティング会社)からB社(ユーザー)に専門的意見を提供するサービスである
  • A社が契約を履行できない意外の理由で契約解除する場合は、発生費用に15%の利益を加算した金額をB社が補償する

[設例7]では、以下の判定基準により「一定の期間にわたり」履行義務を充足するものとしています。

  • 1. 便益を享受する企業が顧客との契約における義務を履行するにつれて、顧客が便益を享受するか

    A社が義務履行不能な場合、他のコンサルティング会社と契約しても仕掛中の便益を享受しない(それまでの作業を大幅にやり直すことになる)、ユーザーB社は専門的意見を受け取ったときしかA社の履行の便益を享受できないことから該当しない
  • 3. 次の要件のいずれも満たすか
    (ア) 企業が顧客との契約における義務を履行することにより、別の用途に転用することができない資産が生じること
    (イ) 企業が顧客との契約における義務の履行を完了した部分について、対価を収受する強制力のある権利を有していること

    (ア)については、専門的意見形成が転用できない資産を生じさせないため該当しない
    (イ)については、履行を完了した部分について合理的な利益相当額を加えた対価を収受する強制力のある権利を有しているため該当する

いわゆる役務提供型のサービスについては、この38項の適用を検討するのが基本パターンということになりそうです。

 

IT企業向けに「収益認識基準はここだけ読んでおこう」というポイントをまとめました。以下リンクより無料で入手できますので、お気軽にお申込みください。

(別サイトに移動します)

https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdRwTakfmqf54-C6IJNHjC4oYmb5Hm_S3AA5xDmyQLYfcd1CQ/viewform?usp=sf_link

 

※本エントリの記載内容は、作成日時点における法令・基準に基づくものです。記載内容に基づく構築・運用に際して当事務所は一切の責任を負いませんので、予めご了承ください。

監査・保証実務委員会研究報告第32号「内部統制報告制度の運用の実効性の確保について」

火曜日 , 17, 4月 2018 監査・保証実務委員会研究報告第32号「内部統制報告制度の運用の実効性の確保について」 はコメントを受け付けていません

日本公認会計士協会より、以下の文書が2018年4月6日に公表されました。

プレスリリース「「監査・保証実務委員会研究報告第32号「内部統制報告制度の運用の実効性の確保について」」の公表について」及びプレスリリース「「社員ローテーションに関するアンケート調査結果(中間報告)」の公表について」

https://jicpa.or.jp/news/information/2018/20180406iii.html

内部統制報告制度の開始から10年を経過した現段階において

近年の内部統制報告書における開示すべき重要な不備の事例分析を糸口に、内部統制報告制度の運用状況に関する留意点を抽出し、そこから内部統制報告制度の実効性を確保するための提言を試みる

という趣旨の文書で、60ページにわたります。特に興味深い記述は

3.新興企業における内部統制
4.ITの利用及び統制

の2箇所で、それぞれのサマリーは以下のとおりです。

新興企業における内部統制

  • 全社的な内部統制の不備事例(カッコ内は是正措置)
    • 取締役会の機能不全(コーポレート・ガバナンスの強化)
    • 役員及び従業員のコンプライアンス意識の欠如(意識向上を図る施策)
    • 内部監査の機能不全(内部通報制度や内部監査の導入・強化、職務分掌の徹底)
  • 業務プロセス及び決算・財務報告プロセスの不備事例
    • 業務プロセス(作成証憑の明確化、社内規程の整備)
    • 管理部門における業務体制の不十分さ(管理部門の人員増員、二重チェック体制)
    • ITシステムに係るリスク認識の欠如(承認権限者の限定、パスワード設定及び管理を本人に限定)

特に「コーポレート・ガバナンスの強化」の観点では、以下のリスクがあります。

社歴が浅い企業や社長が創業者であり筆頭株主である企業においては非常に重要なことであるが、取締役・監査役の選任は社長による人選を反映したものとならざるを得ない環境にあるので、社長のガバナンス意識に大きく左右されてしまう。

ITの利用及び統制

  • ITの利用及び統制の不備例(カッコ内は是正措置)
    • 不適切なデータ入力やデータ改竄(適切な権限管理、システム利用状況についての定期的な評価、スプレッドシートの統制リスク評価)
    • 処理ロジックの誤り(適切な移行の実施や障害対応など全般統制の有効性に留意、パラメータ値の脆弱性に留意)

文書の大半は監査人向けの記述ですが、作成者(会社側)にとっても示唆に富んでいますので、ぜひ一読いただければと思います。

 

当事務所へのお問い合わせはこちら

https://ssl.form-mailer.jp/fms/e5d2273b248067

Facebookページはこちら

https://www.facebook.com/harakancpa/

[書籍]信用の新世紀(ブロックチェーン後の未来)

木曜日 , 12, 4月 2018 [書籍]信用の新世紀(ブロックチェーン後の未来) はコメントを受け付けていません

ブロックチェーンをとりまく状況について、多くの刺激を受ける一冊でした。

本書の構成は冒頭の未来SF風ストーリーをきっかけとして、近い未来に訪れる「貨幣経済の衰退」「専門分化の衰退」「国家の衰退」の可能性を分析しています。

【目次】
プロローグ――貨幣経済は衰退しました
第1章 ブロックチェーンって何だ?
注目されるブロックチェーン
ブロックチェーンとブラウン管は似ている?
「証明」の手段としての新聞――すべてはタイムズ紙の見出しから始まった
ビットコインの「問い」と「補題」 ほか
第2章「信用」の歴史――口約束から契約へ、契約からコードへ
心の理論
原始の約束
全体主義的農耕の始まり
職業人という名の奴隷 ほか
第3章「信用」と「裏切り」――ビザンチン将軍問題をめぐって
ビザンチン将軍問題の背景
ビザンチン将軍問題とはどんな問題か
ビザンチン将軍問題を解く ─ 司令、攻撃やめるってよ ほか
第4章 ブロックチェーンの可能性と不可能性
応用可能性が花開いた
続々と行われる実証実験――醒める狂騒
人類史に残る新しい会社の出現
地球規模オペレーティングシステム ほか
第5章「信用」の新世紀 ─ 社会はどこに向かっていくのか
「貨幣経済は衰退しました」のリアリティ
貨幣と会計の変化
「貨幣」と「専門分化」と「国家」が三つ巴で衰退する
限界費用ゼロかつ専門未分化社会の衝撃 ほか
エピローグ――フレンズ

特に「貨幣経済の衰退」の可能性はにわかにイメージしがたいところですが、著者の主張としては「物質・エネルギー」と「知識」を変数として富を最大化することができるという点にあり、これを社会インフラとして今後どのように実現していくか(実現しようとしているか)、そこにブロックチェーン技術がどのように使われていくのかという未来予測は非常に興味深いです。ビットコインの普及はそのような時代のスタート地点に過ぎないのかもしれません。

そのような時代になったときに「会計」の機能がどのように位置づけられるかについて、著者はこのように主張します。

旧来のアカウンティングが、企業の事業活動を定量的にモデル化した情報を提供、あるいは分析するためのプロセスだったとするならば、これからのそれは、地球規模OS上のアプリケーションの動作状況を定量的にモデル化し、その情報提供と分析とにより社会にフィードバックをかけるプロセスであると言えるだろう。

しかし、そうした活動の様子は、どのように定量化できるのだろうか。 問題を、私たちの社会の「富」の量や質がどのように推移しているのかを定量的に把握することだと置き換えて考えれば、すでにフラーによる富の定義によって道は示されている。すなわち、「物質・エネルギー」および「知識」を定量化し、その推移を追跡・分析するのである。それが未来の新しいアカウンティングの姿だろう。

斉藤賢爾.信用の新世紀 ブロックチェーン後の未来(NextPublishing)(Kindleの位置No.2048-2055).インプレスR&D.Kindle版

500年続いた会計機能の位置づけが大きく転換期を迎えるのかもしれないと思うとわくわくします。本書で随所に参照されていた「負債論」もだいぶ昔に購入して積読状態ですが、がんばって読んでみたいと思います。

 

当事務所へのお問い合わせはこちら

https://ssl.form-mailer.jp/fms/e5d2273b248067

Facebookページはこちら

https://www.facebook.com/harakancpa/

[IFRS]NTTグループ4社が任意適用を開始

火曜日 , 10, 4月 2018 [IFRS]NTTグループ4社が任意適用を開始 はコメントを受け付けていません

いよいよ本丸が来たという感じでしょうか。ほぼ同じタイミングでIFRS任意適用のリリースが出てきました。

 

日本電信電話(NTT持株会社) 米国基準→IFRS

NTTドコモ 米国基準→IFRS

エヌ・ティ・ティ・データ 日本基準→IFRS

エヌ・ティ・ティ都市開発 日本基準→IFRS

 

各社ニュースリリース

http://www.ntt.co.jp/news2018/1803/180329a.html

https://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/2018/03/29_01.html

http://www.nttdata.com/jp/ja/news/release/2018/032901.html

https://www.nttud.co.jp/ir/news/n22657.html

 

NTTデータグループはIFRS導入支援サービスを長きにわたって提供してますが、範を垂れる意味も込めて自社でも準備していたということでしょうか。かつての古巣(グループ会社ですが)にいた身としては感慨深いものがあります。どうでもいいですが会社名表記は「エヌ・ティ・ティ・データ」が正しいことを中の人になるまで知らなかったことを念のため申し添えます。ドコモのほうは「NTT」表記なので統一性がありませんが、いろいろ内部でのせめぎ合いの結果なのでしょう。

ともあれ、名だたる大企業が任意適用に踏み出すことで、強制適用を待たずしてIFRS適用の地ならしが一気に進むのではないかと思われます。すでに170社を超えた実績がありますし、日本もようやくですが国際化・標準化の流れに追いつきつつあるといえるのではないでしょうか。

 

当事務所へのお問い合わせはこちら。IFRS導入支援コンサルティングも提供しております

https://ssl.form-mailer.jp/fms/e5d2273b248067

Facebookページはこちら

https://www.facebook.com/harakancpa/