この季節の憂鬱な業務に「法定調書作成業務」があります。財務経理部門以外にはあまりなじみがない業務ですが、前の年に毎月会社から支払われた給与や報酬の金額および源泉所得税として会社が預かった金額を集計して税務署や自治体に提出する業務です。具体的には以下の書類を作成して1月31日までに提出することになってまして、書類の数は結構多いです。
最近では給与支払報告書も自治体毎に一つずつでなくまとめて提出できるようになったりでシステムに改善も見られるのですが、そういう細かい点ではなくもっと根本的な点で感じている疑問が2つほどありまして。
まず提出期限については、従来からこのようなルールになっていてなぜか変更もできないわけで今更変更する余地はないのかもしれませんが、決算日も会社によって違うという現状にまったくフィットしてません。提出タイミングも1月に集中するので作成者も税務当局もお互い不幸になっています。(昨年は1月末前後に申請システムへのアクセスが集中して混乱が起きました)
そして、そもそも法定調書は「1年分の給与や報酬の発生状況を紙(およびそれを再現した入力画面)の所定書式に集計して転記する」というまったく付加価値のない作業による成果物です。「日々の給与や報酬の支払状況と、付随して発生する源泉所得税の金額を正確に補足する」という目的に照らすならば、たとえば
という仕組みで自動化もできるはず。わざわざ「書面」にまとめる意味はありません。しかも今は(是非はさておき)マイナンバーでトレースできるのだから個人別の支払額や税額の集計も容易なのに、なぜかそのような仕組みにはなっていないのが不思議です。(内部的にはそのような仕組みがあるのかもしれないですが、少なくとも我々から見える情報はそのようになっていいない)。
この業務でボトルネックになっているのはひとえに法定調書という「紙の様式」にほかなりません。すでにあるデータを再度集計して紙の書式に転記することにどれほどの意味があるのかというと、個人的にはまったく意味がない作業だと思っています。特に行政手続に顕著ですが、こういった「データ→紙→データ」という付加価値のないデータ変換作業による社会コストは相当な規模かと推察されます。
士業の日々の仕事に埋没しているとどうしても制度設計に従順になりがちなので、時々立ち止まって制度そのものも矛盾も考えたほうがよさそうです。(とはいえ報酬をお客様からいただいて行っている業務ですから手を抜くことはなく、これはこれでしっかりと進めます)
もやもやを抱えながらも、また法定調書を粛々と作成する業務に戻りたいと思います。現場からは以上です。
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新年明けましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
戌年ということで秋田犬です。
2017年は仮想通貨・スキャナ保存制度・IFRSの新たな基準など激しく変化が起きた一年で、今年もさまざまな変化が加速するものと予想されます。大きな世の中の変革の流れを適切にフォローし、お客様の事業価値につなぐことができるようメンバー一同邁進して参ります。何卒よろしくお願い申し上げます。
クインテット・マネジメント・パートナーズ 原幹公認会計士事務所
代表 公認会計士・税理士・公認情報システム監査人(CISA)
原 幹
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秋田犬の年賀状用画像【あ、きた。「いぬ年」】キャンペーン!~2018年は戌年~
2018年(平成30年)12月までの税務カレンダー(Googleカレンダー形式)を更新しましたのでお知らせします。
PC/スマホ/タブレット等でご利用ください。更新内容は以下のとおりです。
基本的には毎年同じイベントなのですが、休日による変動が少し入るのでそのあたりを調整しています。
表示イメージは以下のとおりです。項目をクリックすると詳細が表示されます。カレンダー右下の「+」ボタンを押して、ご自分のカレンダーに追加することもできます。ご利用は自己責任にてお願いいたします。
(Google Chromeを推奨。環境によっては見えないことがあります)
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2017年も終わりが近づいてきました。今年も仕事のうえではさまざまなクラウドサービスにお世話になりましたので、特に利用頻度の高かったものを挙げてみます。主に事務処理業務における業務優先度や利用頻度によるものなので、最近出てきたサービスはあまりありませんがそのあたりはご容赦いただければと思います。(以下、ランキングではなく順不同です)
2018年も新たなサービスが続々と出てくると思いますが、積極的に試しつつ現状業務に合うかどうかを見極めながら少しずつ本格導入していく予定です。
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12月1日に公表された所得税法上の仮想通貨の扱いに続き、会計基準もその姿が明らかになってきたようです。
以下、備忘リンクとコメントを交えつつ現段階でのまとめエントリです。
(会計基準)
実務対応報告公開草案第53号「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い(案)」の公表
https://www.asb.or.jp/jp/accounting_standards/exposure_draft/y2017/2017-1206.html
「仮想通貨「時価評価で」 企業会計基準委 来期から適用方針」(会計ニュース・コレクター)
http://ivory.ap.teacup.com/kaikeinews/11639.html
仮想通貨の所得計算、具体例公表 国税庁がQ&A(日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO24143700R01C17A2000000/
(所得税)
仮想通貨に関する所得の計算方法等について(情報)(PDF)
https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/171127/01.pdf
No.1524 ビットコインを使用することにより利益が生じた場合の課税関係(国税庁タックスアンサー)
http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1524.htm
(消費税)
非課税取引(国税庁タックスアンサー)
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shohi/6201.htm
残りは法人税上の扱いになりますが、これもあまり待たずに明らかになりそうです。
さて処理方法はさておき、仮想通貨と今後どのように付き合っていくべきなのでしょうか。なかなか判断が難しいところですが、利益が出たところで総合課税になるし損失が出ても通算できないしで国の懐を潤すだけの投資対象にも思えます。2017年は仮想通貨市場におけるボーナス期間のような意味合いが強かった年でしたが、今後同じような伸びが期待できるかどうかはわかりません。
最近お客様からもよくご質問を受けるのが「所得の申告にあたって仮想通貨を年末でいったん利益確定して確定申告するべきか、保有し続けるべきか」という話なのですが、考えられる解としては
のいずれかで、どちらが正解なのかは仮想通貨保有者の置かれた状況と心理次第という身も蓋もない結論になってしまいます。仮想通貨自体が現状では法定通貨としての信用力を持っていないいわば「おまけ通貨」という位置づけである現状では、そこから得られる利得も「おまけ所得」として割り切っておく(利得が大きくても小さくてもそんなものだと割り切る)のがよいのかもしれません。個人的には今の狂騒的状況は静観しつつ、仮想通貨が制度上も法定通貨として認められてから投資対象として真剣に検討するべきかと思います。
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2017年11月8日に、日本公認会計士協会IT委員会研究資料第9号として
「Trust サービス原則、規準及びその例示(セキュリティ、可用性、処理のインテグリティ、機密保持及びプライバシーに係る適合するTrust サービス原則、規準及びその例示の2014 年版の更新)」
が公表されました。
http://www.hp.jicpa.or.jp/n_member/specialized_field/20161226ahs.html?t
2016年版のtrust services principles and criteria framework(TSPC)の公表を受け、翻訳も更新されたものです(なお正式版は英文になります)
http://isae3402.com/ISAE3402_trustservices.html
https://www.aicpa.org/interestareas/frc/assuranceadvisoryservices/trustdataintegritytaskforce.html
主な変更点は以下のとおりです。構成の変更にとどまっているようです。
① 規準の構成の変更
2014年版の「Trustサービス原則、規準及びその例示」は、「セキュリティ、可用性、処理のインテグリティ、機密保持に共通する原則と規準」と「プライバシー原則と規準」が分かれていましたが、2016年版の「Trustサービス原則、規準及びその例示」では、「全ての原則に共通する規準」と「追加規準」(プライバシーに関する追加規準の新設)の構成に変更されました。
② 規準の修正
上記構成の変更に伴い、プライバシーに関する規準の統廃合(既存の共通規準との重複項目の削除等)が行われました。
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確定申告はまだまだ先だと思ってたらすぐやってきますので準備はお早めに。
さて、こんなニュースが流れております。
スマホでの確定申告はiPhone非対応「普及させる気ある?」と呆れ声も
http://news.livedoor.com/article/detail/13853542/
正直「ああ、またか」と天を見上げてしまういつもの展開というか、マイナンバー読み取りに対応したスマホというのがすでに意味不明。記事タイトルのとおり、当局も普及させる気はなくて国産スマホメーカーの利益を守ることか、それとも何も考えてないかのどちらかなのかなとか思いました。
本人確認のためであれば「マイナンバー読み取り機能」にこだわらず、マイナンバーカードもしくはマイナンバー通知カードをスマホで撮影してアップロードすれば足りる(実際そのような運用をしているウェブサービスがたくさんある)のに、あえてこのような方向にしてしまうのは理解に苦しみます。この調子だと、マイナンバーカードの普及(現在絶賛停滞中)とか電子申告業務の統合とか、絵に描いた餅にしかならないのだろうなあと暗澹たる気持ちになります。業務の当事者としても他人事ではありません。
税務当局は制度設計をおかしな形で歪めることなく、利用者にとって申告作業が容易で便利になるような工夫を考えてほしいと思います。
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SaaSビジネスを展開する企業の収益モデル(いわゆるサブスクリプションモデル)の事業管理においては、伝統的な財務会計による損益計算書とは異なる計算が求められますが、それはどのような考え方なのでしょうか。これについてSalesforceがまとめた創業者向けガイドに基本的な考え方がまとめられています。一部ではすっかり有名な文書ですが、無料で入手できますので一度目を通してみてください。
SaaS創業者向けスタートアップガイド(日本語)
SaaS Startup Founder’s Guide(英語)※右下にePubのリンクがあります
https://www.salesforce.com/solutions/salesforce-for-startups/overview/
なお、同文書についてはこちらのブログによくまとめられています。
ネットフリックスの値上げから考えるサブスクリプションモデルの適切なKPI設定(なおゆきさんのnote)
https://note.mu/naoyuki884/n/nf8daed9d9220
(以下は同エントリの受け売りになりますが)SaaS企業は月額/年額でユーザーが料金を払うことで、他の業態に比べて年単位での収益を予測しやすいという特徴があります。具体的に、年間定期収益(ARR, Annual Recurring Revenue)と呼ばれる「期初時点での1年先の見込み収益」が主要な業績管理指標として多くのSaaS企業で採用されています。ARRは月次定期収益(MRR, Monthly Recurring Revenue)を12ヶ月分積み上げた数字になります。
とりあえず、以下の2つの考え方は知っておいて損はないと思います。
SaaS企業の損益計算書モデル
(SaaS創業者向けスタートアップガイドより引用)
また、こちらはSalesforceで採用されている管理指標を表すthe modelという図になります。
(http://success.salesforce.co.jp/assets/SuccessClinic100126.pdfより引用)
事業管理と財務会計の二つの要請に応えていくためには、たとえばユーザーからの支払(たとえば年額払い)が発生したときに、財務会計上の収益認識の考え方による集計(役務が提供された部分について収益を認識する)と、ARRベースでの収益の集計(役務提供のいかんに関わらず、月額で追加獲得/アップグレードにより支払われた利用料をもとに集計する)が同じタイミングでできるのが理想なわけですが、私の観測する範囲ではARRベースから財務会計ベースへの組替を手動計算で行っているところが多いです(さすがにSalesforceの規模の企業であれば自動化されていそうですが)。
SaaS企業が数多く活動している昨今では、このあたりを自動化するニーズも実は多いのかもしれません。もちろん管理指標は唯一絶対のものではないので、提供するサービスの性質に合った管理指標を運用する必要があります。
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画像は総務省つながりです。
総務省より、以下の文書が9月に公表されています。
「IoTセキュリティ総合対策」の公表
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu03_02000126.html
IoTセキュリティ総合対策(別紙)
http://www.soumu.go.jp/main_content/000510701.pdf
内容自体は今後のIoT(Internet of Things)の進展を踏まえてのセキュリティ対策の方向性を規定する文書なのですが、気になる記述としてP11の「② セキュリティ対策に係る情報開示の促進」があります。(太字は筆者)
民間企業においては、複雑・巧妙化するサイバー攻撃に対する対策強化を進める動きが見られるようになってきており、こうした取組をさらに促進するためには、セキュリティ対策を講じている企業が市場を含む第三者から評価される仕組みを構築していくことが求められる。米国においては、日本の有価証券報告書にあたる 10-K 報告書において記載することが推奨されるセキュリティ対策について証券取引委員会(SEC)がガイドラインを策定・公表している。こうした情報開示はあくまで任意のものであるが、企業の対策促進の観点からみて有益な取組であると考えられる。このため、我が国においても、あくまで任意の情報開示であることを前提としつつ、企業のセキュリティ対策に係る情報開示に関するガイドラインの策定について、関係府省と連携しつつ、年度内を目途に一定の結論が得られるよう検討する必要がある。その際、開示する情報の粒度については情報開示が新たな攻撃を誘発しないよう十分に配慮するとともに、こうした情報開示とサイバーセキュリティ保険の普及の在り方について併せて検討する必要がある。
現状では任意とありますが、今後は有価証券報告書などの法定開示で情報セキュリティ対策についての記述も加わっていく流れなのでしょうか。監査報告書の透明化もそうなのですが、記載事項がいたずらに増え続けることで本当に知るべき情報が埋もれてしまう可能性もあるので、読み手としては注意が必要です。
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旬刊「経理情報」2017年10月1日号(No.1491)に 記事
『スキャナ保存で経費精算業務を効率化するポイント』
を寄稿しました。
経費精算業務にフォーカスしたスキャナ保存について書かせていただきました。
ご一読いただければ幸甚です。
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