仮想通貨の会計処理 検討はじまる

火曜日 , 25, 4月 2017 仮想通貨の会計処理 検討はじまる はコメントを受け付けていません

企業会計基準審議会(ASBJ)で、仮想通貨に関する会計処理の検討が開始されたようです。2017年7-8月頃をめどに基準案が公表されるとのこと。

https://www.asb.or.jp/jp/project/plan.html

https://www.asb.or.jp/jp/wp-content/uploads/20170411_0.pdf

すでに第1回の専門委員会が開催されていますので、近く議事が共有されることでしょう。ビットコインに代表される仮想通貨を日常的に業務で取り扱う状況が近い将来に現実のものになりそうなので、実務で混乱しないよう基準を整備しておこうという動きなのだと思われます。

さてこの仮想通貨、少し調べてみるといくつかの論点があるようです。2016年11月14日開催の基準諮問会議議事を参照します。(以下、適宜引用します)

https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/standards_advisory/minutes/20161114/20161114_02.pdf

  • 仮想通貨の範囲

改正資金決済法における定義は次のとおりです。

1)物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
2)不特定の者を相手方として1)に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

いわゆる電子マネーは上記の範囲から除かれます。

  • 仮想通貨が参照する会計基準等

「金融商品」「棚卸資産」「外貨建ての現金」といった見解に分かれているようです。

1) 現行の会計基準に当てはめた場合
仮想通貨は、法定通貨には該当せず(資金決済法第 2 条第 5 項第 1 号)、それ自体が権利を表章するものではないため有価証券にも該当しない(金融商品取引法第 2 条)(注1)と考えられる。よって、現行の金融商品会計基準等における金融商品の範囲に含まれると解釈するのは難しいという意見がある。
仮想通貨は、需要と供給で価値が変動しており、金や一次産品等の「コモディティ」に概念的には類似するが、本源的価値があるわけではない(注 2)。「コモディティ」との概念的な類似に鑑みると、棚卸資産の評価に関する会計基準における棚卸資産の範囲に含まれるというのは相対的に解釈上の無理が少ないという意見がある。ただし、本源的価値がゼロであることから、棚卸資産と相違する点も多いため、その点を反映すべきではないかといった意見がある。
2) 仮想通貨の性質を考えた場合
仮想通貨は、決済手段として設計されている点が特徴的であり、必ずしも棚卸資産のように投資の成果を獲得することを意図しているわけではなく、モノ自体の価値というよりは市場の換金レートで価値が実現することができるものであるため、「外貨建ての現金」に準じた会計処理が適合するのではないかという意見もある。

  • 預かり資産の計上時点および計上要否
    • 秘密鍵の占有に基づき仮想通貨交換業者は資産を計上し、その返還義務を負債として計上する
    • 認識時点としては、顧客と仮想通貨交換業者の契約条項に従う
    • 預かり仮想通貨を資産及び負債として計上し、時価評価する会計処理を採用する場合には、負債の時価評価という観点から、既存の会計基準との整合性が論点になる

などの見解があります。

  • 取引類型

仮想通貨交換業者において想定されるのは以下の4類型です。

a.現物取引(自己取引)
b.デリバティブ取引、信用取引、貸借取引(自己取引)
c.現物取引(委託取引)
d.デリバティブ取引、信用取引、貸借取引(委託取引)

  • 評価及び換算方法
    • 時価のある金融商品又は外貨建取引会計等処理基準における期末日換算レートと同様に取り扱うか
    • 複数の仮想通貨交換業者で異なる価格が観測されるため、通貨ペアごとに最も活発な市場を使う必要があるか

などの見解があります。

  • 表示と開示

財務諸表上は「仮想通貨」として独立した科目をもって表示すべきかという見解があります。

  • 消費税法上の取扱い

仮想通貨は電子的なデータでありますが、譲渡可能な資産の受渡処理となり「資産の譲渡等」と取り扱われます。一方で改正資金決済法を受けて、2017年7月1日より「非課税取引」として統一されることになるようです。

現段階では以上の情報にとどまります。財務諸表上で識別する範囲が物的な財産から無形の財産へ広がり、仮想的なデータまで広がることで財務諸表が示す経済実態とはどのようなものになるのか、そしてそれらのデータを会計データとして識別する環境は今後どのように変容していくのか。興味深く見ていきたいと思います。

 

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