[書籍]そこが知りたい! 「のれん」の会計実務

月曜日 , 16, 6月 2025 Leave a comment

https://www.biz-book.jp/isbn/978-4-502-26601-0

のれんの会計処理は、既知のとおり日本基準では定額償却・減損テスト処理ですが、IFRSのように非償却・減損テストの処理と符丁を合わせようとする動きがあるようなので、現行の日本基準の実務について知識確認のために通読。実務面では「連結調整勘定」世代なのですが、現行の処理について理解が深まりました。2018年刊行で入手したのは17刷なので、この領域ではロングセラーということになると思われます。評判どおり、図表も仕訳例も豊富なので中途半端な理解を少し高い強度に引き上げることができます。

(以下は読みながらのメモです)

  • 第1章 のれんの概念と基本的な考え方
    • 売り手買い手の価格とのれんの構成要素の関係(被取得企業等固有の超過収益力、のれん構成部分のシナジー、全体シナジー)
    • 取得原価配分(既存の資産および負債の時価評価額、新たに識別された無形資産等の時価評価額、のれんの関係)
    • ASBJ「のれんはなお償却しなくていいのか-のれんの会計処理及び開示」(リンク)の整理
      (相当以前に議論されたポイントなので、今更蒸し返されるのは違和感があります)
  • 第2章 のれん発生時の基本的会計処理
    • 企業結合が取得に該当する場合(のれんの種類、取得関連費用、条件付取得対価、取得原価の配分方法、のれん、負ののれん)
    • 企業結合が共通支配下の取引の場合
  • 第3章 のれんと減損会計
    • 減損判定手順
    • 子会社に係るのれんの減損
  • 第4章 会計上の実務論点
    • 持分の変動
      • 株式の追加取得
        • 連結→連結
        • 原価法→連結
        • 持分法→連結
        • 持分法→持分法
        • 原価法→持分法
      • 株式の一部売却
        • 連結→連結
        • 連結→持分法
        • 連結→原価法
        • 持分法→持分法
        • 持分法→原価法
          (このあたりまでは教科書的な基本論点として抑えておきたい)
      • 増資等による持分比率の変動
      • 複数取引が一体取引と判断された場合
      • 間接所有、事後的な企業結合、外貨建のれんの取扱い
        (このあたりは流し読み。設例も含めて理解が追いつきません(告白))
  • 第5章 税務上ののれん
    • 資産調整勘定、差額負債調整勘定、非適格合併等対価額、時価純資産価額の定義、償却期間、税効果
  • 第6章 国際的な会計基準におけるのれん
    • のれんの償却、減損テスト、減損の検討過程
    • 日本基準(購入のれん)vsIFRS(全部のれん)
    • 無形資産の識別可能性(IFRSのほうが広範囲)
    • 予測CFと将来事象の考慮、予測CFの基礎

(以下は単なる感想です)

  • 単なる投資原価差額の時代からあれやこれやが変わり「超過収益力の認識」「取得原価の配分」「無形資産の識別」「減損テストでの将来CFの見積」などなど、見積り要素盛り盛りの実務なので担当者の苦労が察せられます。
  • 見積の掛け算で算出された金額が合理的であることを確かめるには限界があるので、理論的な根拠はさておき機械的に定期償却することに一定の合理性はあると感じます。税務とも整合しますしね。
  • IFRSに符丁を合わせる形で非償却処理を推奨する動きがあるようですが、仮に非償却処理が採用された場合に毎年度ごとの減損テストの実施が必要になることについて、それに伴う監査工数の増加を織り込んだ議論は果たしてなされているのでしょうかね。
  • まとまった時間を作って専門書を定期的に読み込むのは大事ですね。時間を溶かすSNSを捨てよ街へ出よう。

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