https://www.biz-book.jp/isbn/978-4-502-51891-1
姉妹作「スタートアップの経営管理を学ぶ」に続き、成長期から上場直前のいわゆるミドルステージにおける経営管理のあり方について解説しています。自分の場合は過去に関わってきた上場準備会社の足跡を思い出しながら知識の再確認という位置づけでしたが、抜けている知識もあって理解が深まったと思います。
本書では経営管理体制構築の「5つの視点」のうち、不正防止の仕組みが多くの比重を占めている点は重要で、成長期において見過ごされがちな不正の機会をいかに検知し、防止していくかの仕組み作りが肝要であると述べられています。
内部監査について本章でも一章を割いて解説されていますが、内部監査機能の設置機能をいつのタイミングにするか、実効性ある内部監査をいかに確立していくかは各社異なるところがあり、知見が求められるところでもあります。いわゆるJ-SOX対応以外にも業務監査の推進や三様監査の対応などやることが山積みななかで、いかに社内の協力を得てスムーズに進めていくべきかは専門家の力量が問われますね。
ミドルステージにおけるIT統制の整備をどこまで引き上げていくかは大きな課題ですが、ひとまずJ-SOXへの対応を完了し、要求品質に応じてISMS取得などを目指すのが一般的なところかと思われます。個人的は情報セキュリティへの対応の要請の高まりをふまえ、この段階から情報セキュリティの整備運用体制は確立してもらいたいところです。
本書では経営管理固有のキーワードがQ&A形式でわかりやすく解説されているので、未経験者でも入りやすい構成になっています。
一方で不満を書いてしまいますが、実務書によく出てくる「架空の会社のビジネスケース」パートがあると読み進める気力が弱ってきます。本書の場合は高橋さんと山田さん。ケーススタディを読んでいていつも思うことなのですが、キャラクターの性格付けが弱いので人物がイメージできないまま話が先に進んでしまうのはいただけないです。途中からAさんBさんになってますます記号化していくストーリーを読まされていくと、肝心の中身への理解も弱まってしまうのが残念なところ。
…と思いながら読み進めていくと、登場人物は記号的ですがストーリー自体は面白く構成されているパートがいくつもあり、適当に読み流してはいけないなと反省。(弁明しておくと、本書における解説パートは非常にすばらしく初読の読者向けにコンパクトに解説するのが長けています。残念なのはストーリーパートの人物描写だけですね)
解説にストーリーを関連付けて読ませる手法にそもそも無理があって、魅力的なストーリーに解説が関連付いたほうが読みやすくなるかなと思いながら読んでおりました。
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