会計・監査ジャーナル(日本公認会計士協会の機関誌ですが書店でも入手可能です)の2017年5月号に
「AIの可能性と会計監査への活用」
というインタビュー記事が掲載されています。山田誠二・人工知能学会会長との意見交換が中心になっており、興味深く読ませていただきました。感想としては研究は進められているものの、監査実務にAIが入り込んでいくのはもう少し先のタイミングかな、といった印象です。
山田先生とは雑誌「企業会計」7月号で「AIは会計士の仕事を奪うか」特集が組まれた際に僭越ながら意見交換をさせていただきました。AIにも得意不得意はあるので監査業務のような直感的な判断につなげるための学習をどのように行わせるかが非常に難しい、といった示唆をいただきました。(AIによる経理業務の改善というテーマで私も書かせていただいてますので、ご興味あればバックナンバーをご参照ください)
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http://www.chuokeizai.co.jp/acc/201607/index.html
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山田先生に倣い、AIを「人間に代わって行動な知的処理を実行するプログラム」(いわゆるコンピュータ化や自動化は含まない)と定義するとして、監査業務をAIが代替するもしくは人間が行う業務をAIが補完するといった姿が近い将来に実現するかもしれません。その際は現在の「試査+リスクアプローチ」から「精査+リアルタイム検知アプローチ」に移行していくようです。
一方で、監査業務にAIを活用するにあたって大きなハードルになるのは
といった点になろうかと思われます。
「会計帳簿データを解析する」と単純に言っても、原始入力データに規則性がなかったりノイズが混じっていたりすれば不整合を裏付けるデータを抽出するのは困難でしょう。テキストマイニングで解決できるレベルのハードルなのかは現状では判断できかねますが、少なくとも正常データと異常データの線引きをする閾値を決めるのも困難が伴いそうです。
直感的・因果関係に基づく判断はどういう形であれAIに学習させる必要があるので、これは過去データをもとに学習が進むことで一定の成果が得られるかもしれません。
大手監査法人でもこれらの研究は進んでいるようで、当面は大量の監査業務データからの学習成果を得つつ人間の判断業務をどのように補完するのかが課題になるでしょう。案外早いタイミングで「AI監査」が実現するかもという予感もしております。
財務諸表作成者・利用者の立場からは、日々登録する会計データをいかに整形データとして整備するかどうかが鍵になりそうです。もっともこの点はクラウド会計ソフトによる改善が図られていて、入力段階でタグ付けや科目補正など自動化が行われているのでさらに機能が進化すれば利用者が意識することなく整形データを蓄積していくことができるようになるかもしれません。
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