本年度の法定調書業務もなにごともなく無事完了しました…と言いたいところですが、今年は少々事情が違ったようで、地方税ポータルシステム(eLTAX)でトラブル続きで参りました。提出期限の1月31日前後にeLTAXのシステムへのアクセスが集中してつながりにくいという状況が続き、現在も収束しておりません。
私自身の業務としても26日前後はまだましでしたが、27日から31日まではほとんどつながらなかったという印象です。あまりにトラブルが続くので、eLTAX自身や自治体も2月1日までの受理を容認するという声明を出さざるを得ない事態になっています。
eLTAX(地方税ポータルシステム)
eLTAX へのアクセス集中に伴う、法人事業税、地方法人特別税、法人都民税、事業所税、固定資産税(償却資産)の申告書の対応について(東京都主税局)
http://www.tax.metro.tokyo.jp/oshirase/2017/20170131.pdf
eLTAXにアクセスできない。遅延?寝てるの?税理士の悲鳴続出(togetterまとめ)
https://togetter.com/li/1076027
1月末は「合計表」「給与支払報告書」「償却資産税申告書」と提出期限が集中する時期なので(11月決算法人の申告期限でもあります)、このような状況は容易に予測可能かと思われます。今年のような状態は来年は万全に対策してもらいたいものです。
さて、本題はここからになります。毎年この時期に行われる法定調書業務をざっくり表現するならば
「昨年一年間の給与や報酬の支払い状況をとりまとめて税務署や自治体に対して報告する」
という仕事で、よりぶっちゃけて書くならば
「徴税業務の代行作業(税務署や自治体の作業負担が企業や会計事務所に転嫁される)」
といえます。業務として手掛けておきながら書くのも気が引けますが、体よく当局の作業の肩代わりを押し付ける制度設計になっている感は否めません。そのわりには法定調書業務は煩雑な手順を踏むのですが、具体的には次の手順で進められます。
思いつくだけで「給与計算ソフトへのデータ入力」「給与計算結果の目視チェック」「給与計算ソフトから申告ソフトへの転記」「申告ソフトから出力した提出書面データの目視チェック」「申告システムへの提出」という場面でそれぞれ手作業が発生しており、目視チェックは仕方ないにしても非常に効率の悪い作業に思えます。
一定人数以上の企業であれば源泉所得税の集計と支払いは毎月行っているはずですので、従業員ごとの支払額や源泉税額をマイナンバーで名寄せして当局側で集計することもできるはずなのに、そのような制度設計にはなっていません。当局にしてみればおそらく既存の書式を変更ないし廃止するインセンティブは働かないので、書式どおりに提出されることが優先なのでしょう。これはマイナンバーが導入されても大きな変化はなく、むしろより煩雑になった感があります。
しかしよくよく考えてみると法定調書のとりまとめに必要な要件はそれほど多くありません。代表的な書面についていえば、必要なデータは以下のとおりです。
企業側からすると、期中の給与や報酬に次のような情報が含まれていればこれらの自動集計も容易に実現できることがわかります。
せっかくマイナンバーがあるので、やろうと思えば支払先ごとの名寄せもできるはずですし、法定調書の書式に落とし込む作業も当局側で行って事業者側は確認すればOK、という運用もできるはず。たとえばこんな感じで。
そのようにはならずに現行制度で法定調書(画面や紙)にわざわざこれらのデータを再入力して改めて書面で提出するという状態になっている現行の制度設計は、非常に効率が悪いと思いますがいかがでしょうか。eLTAXの使い勝手以前に、提出業務そのものにメスを入れる必要があるように思えます。
この時期に多くの企業や会計事務所が法定調書の作成に追われることそれ自体に漠然と(というか露骨に)疑問を感じてしまったのでやや極論を書いてみましたが、法定調書業務に今後イノベーションは起きるのでしょうか。直接的にメリットを受けるのは企業そのものより会計事務所という一部のマーケットという気もしますが、この領域でのバックオフィスの非効率を解消する動きに淡い期待を持ちつつ、来年の法定調書業務も頑張りたいと思います。
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